新型コロナ (Mainichi)

聖火リレー縮小 スタートの福島は「寝耳に水」 市民も落胆

By March 18, 2020 No Comments
展示された聖火リレーのトーチをカメラに収める市民=福島県会津若松市の県会津若松合同庁舎で2020年3月18日午前10時33分、湯浅聖一撮影

 26日にJヴィレッジ(福島県楢葉町、広野町)をスタートする東京オリンピックの聖火リレーについて、大会組織委員会が17日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため規模縮小を決めたことに対し、県内の関係者には戸惑いが広がった。「復興五輪」として東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から立ち上がろうとする姿を見てほしいと準備していた浜通り地域の人たちも、スタートまで10日を切っての縮小決定に落胆している。【柿沼秀行、寺町六花、高橋隆輔、湯浅聖一】

 組織委が発表した内容は▽Jヴィレッジのグランドスタートのイベントを無観客とする▽各最終到着地でのセレブレーションは最終聖火ランナーによる聖火皿点火などに限って実施▽区間内で行うセレモニーは代表者あいさつなどに限定▽沿道などでの盛り上げイベントは基本的に中止――などだ。

 これを受け県は18日、予定していた県主催の各イベントの中止を発表した。オープニングパフォーマンスで予定していた「相馬野馬追」のほら貝演奏や、スパリゾートハワイアンズの「フラガール」によるフラダンス、子どもたちの合唱など。

 このほか、セレブレーションでは▽南相馬市・雲雀(ひばり)ケ原祭場地の相馬野馬追▽会津若松市の白虎隊剣舞など▽郡山市の和太鼓演奏――なども中止を決めた。県オリンピック・パラリンピック推進室は「地元の魅力を発信する場だと思っていたが、残念だ。できる範囲で県のPRに努めたい」と話している。

 また、沿道ではTOKIOら人気芸能人や著名人らが走る場所にファンが集中するケースも考えられるが、県の担当者は「そうなると現場では判断できず、組織委の判断を仰ぐことになる」としている。人気ランナーらの出走とりやめもありそうだ。

困惑する自治体、参加者

 「まさに寝耳に水だ」。1日目にセレブレーションが開催される南相馬市の担当者は、驚きを隠せない様子だった。市では相馬野馬追にちなむ乗馬体験などを計画したが、実施できるかは不透明という。「馬や装具の手配は済ませ、応援用の小旗も発注、納品済みだ。関係機関や市民ボランティアにおわびに回っている」と嘆いた。

 大熊町では町役場前で町民30人によるよさこいの披露を計画していたが、3月の全体練習は自粛。当日も無観客にするか検討中という。町の担当者は「せっかく練習していたのに、無観客では張り合いもない。避難先の町民にも町へ来てもらえると思っていたが残念だ」と肩を落とした。

 新たな対応を考える自治体もある。Jヴィレッジがある楢葉町では、震災から9年を迎え、支援への感謝を伝えるはがきを町民から募集。リレー当日に発送式を予定していた。式の参加は関係者のみに限られる見込みだが、動画による発信も検討する。町の担当者は「世界に感謝を伝えることは状況が変化しても変わらない。沿道で応援予定だった子どもたちの写真を横断幕として掲げるなど、町民が参加を実感できる工夫をしたい」と話す。

 聖火ランナーとして鶴ケ城周辺を走る会津若松市の菊池正光さん(65)は盲目のため、歓声や、観客との触れ合いがなければ沿道の雰囲気が感じられない。それだけに「最低限走れるだけでも楽しみだが、静かに走るのかなと思うと残念」。ただ、なじみの伴走者が一緒に走るため「旗が振られていたり、知人が来たりしていたら伝えてもらって、2人で走りたい」とも話す。

 逆風にさらされる大会を、27歳の時に病気で失明しながらも前向きに歩んできた自らの人生に重ねる。「こういう時にこそ人間の本当の部分が出るもの。しっかり頑張って『コロナに負けてられない』と示したい」と自らを奮い立たせている。

 原発事故の避難指示が4日に解除され、ルートになったJR双葉駅前(双葉町)では、「標葉(しねは)せんだん太鼓保存会」が演奏する予定だ。イベントを主催する同町は23日に実施の可否を判断する。同会の今泉春雄会長(66)は「復興が進んでいるよと発信できる機会。中止でも仕方ないが、『復興五輪』の中で、双葉でのイベントは他とは少し違う意味があるとも思っている」と複雑な心境を明かした。

 会津若松市の県会津若松合同庁舎では18日から聖火リレーのトーチの展示が始まった。トーチに見入っていた会津坂下町惣六の自営業、佐藤哲之さん(71)は「自分は聖火ランナーとして走れず、沿道で応援しようと思っていたので、観覧自粛の呼びかけは残念」と話した。また出発式やイベントなどの縮小・中止については「仕方ないのだろうけど、予定通りにやってほしかった」とした。

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